1.レンタカー事業に必要な許可
レンタカー事業とは自動車を有償で貸し渡す事業であり、これを営むには「自家用自動車有償貸渡許可」という許可を取得する必要があります。
なお、近年よく見るようになったカーシェアリングもこの許可を取得することで営むことができます。
この許可を取得するには、管轄の陸運支局に申請します。
平塚市で許可を取ろうとした場合、横浜市の関東運輸局神奈川運輸支局です。
平塚市にある湘南自動車検査登録事務所(車検場)ではありませんので注意が必要です。
ちなみに、レンタカー事業では以下のようなことはできませんので許可の取得を検討する際には該当しないかご確認ください。
ア 自動車の貸し渡しに併せて運転手を紹介やあっせんする。
イ 車両長7m以上のバスや霊柩車を貸し渡す。
2.レンタカー事業開始までの流れ
レンタカー事業を開始するには、以下のような手順で準備していくことになります。
①運輸支局へ許可申請書を提出する
後述する添付書類と共に運輸支局へ申請書を提出します。
不備なく受理されればおよそ30日程度で許可が下ります。
なお、この段階では必ずしも貸し渡しする自動車を用意しておく必要はありませんが、貸し渡しの自動車を何台用意するのか、また台数分の保管場所が確保できるかといったことはよく確認しておく必要があります。
②レンタカー事業者証明書が交付される
許可が下りたら、登録免許税の9万円を振り込みにより支払います。
この際、「レンタカー事業者証明書」という重要な書面が交付されます。
③車両を登録する
レンタカーとして利用される自動車は、法令で「わ」もしくは「れ」のナンバーを付けることとなっています。
このナンバーを取得するのに、②で交付された「レンタカー事業者証明書」のコピーを添付し、自動車を登録します。
④営業を開始する
営業を開始するにあたり、料金表および貸渡約款(後述します)を営業所の見やすい場所に掲示し、貸渡簿と貸渡証を用意します。
3.許可を取得できない場合
「自家用自動車有償貸渡許可」には欠格事由が定められており、以下に該当する方は許可を取得することができません。
ア 許可を受けようとする者が1年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過していない者であるとき。
イ 許可を受けようとする者が、一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの許可の取消しを受け、取消しの日から2年を経過していない者であるとき。
ウ 許可を受けようとする者が、一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの許可の取消しの処分に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第15条の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に、事業又は貸渡しの廃止の届出をした者(当該事業又は貸渡しの廃止について相当の理由がある者を除く。)で、当該届出の日から2年を経過していない者であるとき。
エ 許可を受けようとする者が、一般旅客自動車運送事業、特定旅客自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業又は自家用自動車の有償貸渡しの監査が行われた日から許可の取消しの処分に係る聴聞決定予定日までの間に、事業又は貸渡しの廃止の届出をした者(当該事業又は貸渡しの廃止について相当の理由がある者を除く。) で、当該届出の日から2年を経過していない者であるとき。
オ 許可を受けようとする者が営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人が前記アからエのいずれかに該当する者であるとき。
カ 許可を受けようとする者が法人である場合において、その法人の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下同じ。) が前記アからオのいずれかに該当する者であるとき。
② 申請者及びその役員が、申請日前2年前以降において、自動車運送事業経営類似行為により処分を受けているものではないこと。
なお、マイクロバスの貸し渡しをしようとする場合、上記の他にも要件がありますので運輸支局や行政書士にご相談ください。
4.必要な要件
①営業所と自動車保管場所を用意する
許可を申請するにあたり、営業所は既に用意している必要があります。なお、営業所に必要な面積などは定められていませんが、貸し渡しする前に自動車の日常点検をする必要がありますので、それが可能なスペースは最低限必要でしょう。
また、自動車保管場所は申請の段階では必要ありませんが、営業所から2キロメートル以内に保管場所を用意する必要がありますので、開業を計画する時点で確保しておくのが望ましいです。
②法人設立の際は定款の目的に注意
自家用自動車有償貸渡許可は個人事業主または法人のいずれでも取得できますが、法人を設立して開業する際には定款に記載する目的に注意します。
「自家用自動車有償貸渡業」というように目的に明記します。
また、中古車を購入して貸し渡しするケースでは「古物商」の許可が必要になる場合がありますので、「古物営業法による古物商」といった記載をしておくと良いでしょう。
なお、管轄によって運用が異なる場合がありますので、設立の際は専門家にご相談ください。
③資格を持った整備管理者が必要になる場合も
乗用自動車のみ貸し渡しをする場合、自動車が10台以上になると、整備管理者の選任が必要となります。
また、整備管理者は以下のいずれかの有資格者または実務経験を有するものでなければなりません。
・自動車整備士技能検定に合格した者(1級、2級、3級のいずれか)
・点検・整備に関して2年以上の実務経験を有し、整備管理者選任前研修を修了した者
④もしもの事故に備えて十分な補償の自動車保険に加入する
事故を起こした場合に備えて、以下の自動車保険への加入が条件となります。
ア 対人保険1人当り8,000万円以上
イ 対物保険1件当り200万円以上
ウ 搭乗者保険(搭乗者が補償対象となる人身傷害保険も含む。)搭乗者1人当り500万円以上
なお、この保険は最低条件ですので、もちろんこれより補償金額が多い保険に加入することが望ましいです。
一般的に、対人保険および対物保険は無制限が良いのではないかと思います。
5.申請に必要な書類
申請には、以下の書類が必要となります。
①自家用自動車有償貸渡許可申請書
定められた様式があります。
②貸渡料金
開業後に営業所に掲示する必要がありますので、見やすい表形式が良いと思います。
③貸渡約款
特に事故や故障が発生した場合の措置についてはよく検討する必要があります。
また、約款の最後にいつから施行するかも記載しましょう。
④会社登記簿謄本(個人事業主の場合は住民票)
代表だけでなく、役員全員が欠格事由に該当しない必要があります。
⑤欠格事由に該当しない旨の宣誓書
定められた様式があります。
⑥事務所別車種別配置車両数一覧表
定められた様式があります。
⑦貸渡しの実施計画
定められた様式があります。
6.営業を開始した後に必要なこと
レンタカー事業は、許可を取ってしまえば更新はありませんが、営業を始めた後が大変です。
日常的に貸渡簿をしっかりつけることはもちろん、営業所の移転や料金、約款の変更があった際は必ず運輸支局に届出をする必要があります。
また、貸渡実績報告書を毎年提出し、車両の台数や貸渡回数などを報告する必要があります。
以上のように、許可申請から運用までしっかり法令を遵守しながら営業していく必要があります。
行政書士いよろい事務所では、レンタカー事業の許可取得から届出、貸渡実績報告までお手伝いさせていただきますので、開業を検討されている方は是非一度ご相談ください。